攻守のバランスを保つことはサッカーの戦術を考える上で最も重要な要素の一つです。
「勝てないまでも負けないためにはとにかくディフェンスに人数をかければよい」という考えにも無理があります。90分間ひたすら守っていれば必ず負けないというわけではありません。攻撃をしない守備一辺倒のサッカーは90分の間に必ず破綻します。守備的な戦術をとるにしても常に攻撃をしかけて来る危険性をもったチームのほうがより守備も安定します。1990年ワールドカップで準優勝したアルゼンチンも守備が強かったとはいえ、マラドーナとカニージアという強力な2トップがいたからこそ少ない失点で決勝まで勝ち上がることが出来ました。しかし「マラドーナ」と「カニージア」のいないチームでは2トップだけでフィニッシュまで持っていくのには無理があります。そのため、攻守のバランスのとれた戦術を考える必要があるのです。では攻守のバランスとは具体的にはどういうことなのか、まずここで考えたいと思います。
攻守のバランスとは単純に考えれば攻撃力と守備力のバランスということですが、その攻撃力、守備力を決める要素をあげると、
攻撃・守備それぞれにかかわる選手の人数
攻撃時・守備時それぞれのポジショニング
選手個人の能力、コンディション
などが考えられます。その他の細かい要素もだいたいこの3つに収まると思います。ただし選手個人の能力やコンディションは攻撃力も守備力も含めたチーム力には影響しますが、ゲーム中のバランスの変化には影響しないので、ここでは考えないことにします。また、さらに大雑把に言えば、ポジショニングとは局面での数的優位を保つためにあるものなので、結局のところすべて選手の人数(全体の人数と局地的な人数)の問題に帰着します。要するに攻守のバランスを保つのは数的不利な状況を作らないようにするためです。
その攻撃力と守備力を最大限に発揮するために攻守のバランスを考えるのは言うまでもありませんが、バランスという言葉からもわかるように、攻撃と守備とどちらかの力をあげようとすればもう一方の力が下がることになります。しかもそのバランスはゲームの中で常に揺れ動いています。攻撃の人数を増やせば守備の人数が減るし、守備の人数を増やせば攻撃の人数が減ります。また、組織的なディフェンスを強化するためにコンパクトなフォーメーションにすればワイドな攻撃が難しくなり、結果的に攻撃陣の数的不利をまねきます。サイドのスペースを大きく使ってワイドな攻撃をしようとすればコンパクトな陣形を整えることが難しくなり、結果的に大きなスペースを作ってディフェンスの数的不利をまねきます。そういったことをふまえてそれぞれのチームにもっとも適したバランスを考えながら戦術を組み立てる必要があります。
